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ブータンの12月を代表する年中行事「9人の悪霊の日」。どの家々も悪霊が不幸をもたらすとして年中プジャという祈祷の儀式を行っているこの国であるが、年に一度ぐらいはその悪霊にも歩はあるとして国民の休日に当てている。この日人々は良い事をしても必ず悪い結果になってしまうのだといって寺院には足を運ばず日がな家族総出でアーチェリーなどの娯楽に興じる。仏教の寛容的な一面を垣間見るこの休日、一方的に「悪の枢軸」などと言うイメージを作り上げ人の住んでいる国を名指ししては戦争を始めてしまうような先進国の首脳陣に是非研修に足を運んで頂きたいものである。
話は変わり「イメージ」と言えば、我々治療を行うものに対する世間のイメージ、一般に治療家と聞くと白髭をたくわえた老人を連想されるようである。ではここでブータンの伝統医と聞いてどのような人物を思い浮かべるだろうか。左手に数珠を握り、紅い僧衣をまとった修行僧。少なくとも私自身ブータンに来る前はそう信じていた。実際ブータン伝統医学院には僧籍をもった伝統医は一人もいない。僧から転職されたという方は数人いるが、一般のブータン人と同じく片手に携帯電話を握り、伝統衣装に身を包む。喫煙者はいないがドマ(キンマの実)を愛好する人は多い。現在全国には4名の女性伝統医がいる。その中で最年少26歳のドゥンツォ・ジェルミさん(ドゥンツォは伝統医に対する敬称)に話を伺った?
− どうしてこの伝統医という仕事を選ばれたのですか?
(ジェルミ)人のために何か役に立つ仕事をしたいと考えた時、医療の世界に興味を持ちました。
− しかしこの国の多くの女性は西洋医学の現場で働かれていますよね。
(ジェルミ)父が仏教僧という伝統的な家庭環境に育ったため、医療を目指して伝統医学院に進学する事は自然な事でした。(ジェルミさんの父親はチベットから亡命してきたリンポチェ[活仏]である)
− 今の伝統医師という職業をどう思われますか?
(ジェルミ)病気で困っている患者さんに対して良い事をしてあげられるという点でこの仕事に誇りの持っています。ですから多くの患者を診療した日はとても幸せな気持ちになります。
− 公務員であるこの職業の給料についてはいかがですか?結婚してもこの仕事を続けますか。またブータンでは個人での医療活動が禁止されていますがその点については?
(ジェルミ)良い仕事であると思っていますので自分を高めながらも充分なお給料をもらっていると思っています。この仕事は続けたいので仕事をサポートしてくれる男性と結婚したいと思っています。個人医療活動についてはいずれ自分で独り立ちして診療所をもちたいという夢があるので政府の改革を望みます。しかしこの仕事に就くまでの教育費と知識を得るための研修等をすべて政府が負担してくれていますので今はこの病院の勤務に満足しています。
− この伝統病院に勤務する中で不満なことはありますか?
(ジェルミ)上司からの愚痴!
「・・・・・・・・そうですか。」さらにプライベートな時間の過ごし方についても伺ってみた。
− 仕事のない休日はどのように過ごされるのがベストですか?
(ジェルミ)寝る・・・。
上司との軋轢は働く女性の間で万国共通の悩みのようである。このインタビューの結論として仏教を背景とするこの伝統医学が民衆とかけ離れた聖職者によって行われているのではなくドゥンツォ・ジェルミさんのような一国民によって行われているというブータンの現状である。未だにブータン医学に対してスピリチャルなイメージを抱きこの病院を訪れる外国人は後をたたない。ブータン医学はその宗教的土地柄の中でブータン国民のニーズをみたすべく育まれてきたブータン王立政府主導の現実的医療サービスなのである。
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